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映像は圧巻。脚本的な新味はなし。『閃光のハサウェイ』レビュー。

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『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』。

 シャアの反乱から12年後、混乱状態の世界では断続的に軍事衝突が発生していた。そんな中、地球連邦政府の腐敗に対抗し、反地球連邦政府組織「マフティー」が始動する。そのマフティーを率いるのは、かつて一年戦争にも参加したブライト・ノアの息子、ハサウェイ・ノアだった。連邦軍大佐ケネス・スレッグや、謎の少女ギギ・アンダルシアとの出会いが、武力による抵抗を画策するハサウェイの運命を変えていく。

機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ|MOVIE WALKER PRESS
機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ(2021年6月11日公開)の作品情報を紹介。「機動戦士ガンダム」の生誕40周年を記念し、“宇宙世紀”の次なる100年を描く「UC NexT 01…

 そういうわけで、好評上映中の『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』を鑑賞して来ました。

 1989年刊行の富野由悠季による全三巻の小説を三部作で劇場アニメーション化する、そのプロジェクトの最初の一作ということになります。

 事前にかなり出来が良いらしいというウワサを聞いていたので、それなりに期待していったのですが、なるほど、これは秀作。

 いままでの『ガンダム』の世界観はそのままに、ヴィジュアルイメージをアップデートする一作といって良いでしょう。

 物語は、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』から12年後を舞台にしています。

 アムロとシャアという英雄を失うに至った動乱から一定の時が経ち、地球連邦政府の腐敗はさらに進んでいるという設定。

 そこで武装組織「マフティー」を率いるのが主人公のハサウェイ・ノア。かれは地球へ向かう高級宇宙船のなかで連邦軍大佐ケネス・スレッグや、なぞめいた少女ギギ・アンダルシアと出逢い、意外な人生へ進んでいくこととなります。

 はたしてハサウェイの運命やいかに――?

「宇宙世紀」のものがたり。

 というわけで、ストーリー的にはいままでの『ガンダム』を知らないとまったくわからない作品となっています。

 『ガンダム』の名前を冠した作品は無数にありますが、この場合、重要なのは、いちばん最初の『機動戦士ガンダム』から直接に続く「宇宙世紀」を舞台にしたシリーズです。

 この「宇宙世紀」の物語は『機動戦士ガンダム』に始まり、『機動戦士Ζガンダム』、『機動戦士ガンダムΖΖ』、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』、『機動戦士ガンダムF91』、『機動戦士Vガンダム』、『∀ガンダム』と続いています(『Gのレコンギスタ』という最新作もある)。

 これらはすべて富野由悠季監督による作品。そして、そのあいだにいわば補足的な「外伝」として、富野由悠季以外の監督による『機動戦士ガンダム0080』、『機動戦士ガンダム0083』、『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』、『機動戦士ガンダム サンダーボルト』などの作品が存在しているわけです。

 これらの作品は、いわば「後付け」によって設定が加えられていった作品でもあり、また制作年代に40年もの開きがあるため、それぞれの作品がその時代のテーマを背負っていて、全体としては、ひと言でいってかなり混乱した状態にあるといえます。

 また、『機動戦士ガンダムSEED』、『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』などは別世界を舞台にした完全にべつのシリーズです。ただ『ガンダム』という名前を冠しているだけの別作品なんですね。

いままでのイメージを一新!

 いまからこのすべてを把握しようとすることは困難ですし、またその必要もないでしょう。

 比較的新しい『ガンダムUC』、『ガンダムNT』、『ガンダム サンダーボルト』あたりは観ておいても良いかもしれないけれど、まあ、あくまで別の作家による別作品であるに過ぎず、『閃光のハサウェイ』とはあまり関係がありません。

 一方で、「宇宙世紀」の大まかな概略と『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の内容くらいは把握しておいたほうが良いかもしれません。

 まあ、遥か未来の「宇宙世紀」において、アムロとシャアというふたりのヒーローがいて、シャアが巨大なテロを企て、アムロが阻止した。

 そして、その際、ハサウェイがクェス・パラヤという少女を殺害してしまい、心に傷を負った、というそれだけわかっていれば問題ないかとは思いますが、どうせなら事前に『逆襲のシャア』を見ておくと良いかも。

 いや、『逆襲のシャア』自体、かなりわけのわからない映画ではあるのですが――。

 『機動戦士ガンダム』というか、「宇宙世紀」の物語は、いわば追加建築をくり返しながら少しずつできていった世界です。

 したがって個々の作品同士には少なからず矛盾もあるし、無理もあるのですが、それでもいまなお、このシリーズは続いています。

 そして、その最新バージョンとして、いままでのイメージを革新的にアップデートしたのが『閃光のハサウェイ』というわけです。

実質的に『シン・ガンダム』?

 1979年の『機動戦士ガンダム』から、じつに42年が経っています。

 そのころ最先端だったアイディアはすでに古びてしまっているわけですが、それでも改築と増築を続けながらいまなお続いているあたりが『ガンダム』の凄さ。

 そして、『ハサウェイ』のバリューはいままでの『ガンダム』のヴィジュアルイメージを一気に改築(アップデート)したところにあるといって良いでしょう。

 しょうじき、企画の存在を聞いたときは「いまさら『ハサウェイ』? それ、やる意味あるの?」と思っていたのですが、じっさいに見てみると、ハイクオリティな作画が生み出す絶対的な臨場感に圧倒されます。

 すでにいろいろな人が語っている通り、「モビルスーツ(巨大ロボット)」と「人間」のスケールの違いを見せる演出は、モビルスーツがいかに恐怖の兵器であるのかを説得的に語っています。

 ぼくのようなアニメファンはいくつものロボットアニメを見なれ、巨大ロボットという存在におおまかなイメージができてしまったいるところがありますが、『ハサウェイ』のロボット描写はその印象を刷新するのです。

 映画には賛否両論が付き物であるわけで、『ハサウェイ』に関してもいろいろな意見があるでしょうが、少なくともぼくは映像面に関しては文句なしと感じました。

 どれもいままでの『ガンダム』で見たことがある絵ではあるのですが、その説得力がまったく違う。これはある意味で『シン・ガンダム』といっても良いのではないかと思うくらい。

シナリオ的な同時代性はない。

 一方で、シナリオ的には特に新しいものはない印象でもあります。

 それはそのはずで、原作は30年以上前の小説であり、ストーリーはそれをほぼ忠実になぞっているに過ぎないわけですから、新しいものなどあるはずもありません。

 そういう意味では、「ヴィジュアル面を大幅に強化した普通の『ガンダム』」といえないこともない。

 ただ、いままでの『ガンダム』をいくつも観てきたファンからすると、「富野セリフ」と呼ばれる独特のセリフ回しや、やたらエキセントリックなヒロイン、どこまでも暗く暴力的な世界観などは、往年の富野アニメを思い出させ、ある種のなつかしさを感じさせます。

 そうそう、昔の富野アニメってこんな感じだったよなあ、という感覚。

 それを最新のアニメーション技術で演出してもらえたのだから、それだけで絶賛するべきであるのかもしれません。じっさい、1900円を払った意味は十分にある体験だったと思っています。

 しかし、これは往年の富野アニメを知らない若い層にはどのように受け入れられるのでしょうか?

 どうも『ガンダム』ファン以外のところでもウケているということなので、意外でもありますし、嬉しくもあります。

 これでまた『ガンダム』ファンは広がっていくことになるかもしれませんね。

 また、この作品をさらに乗り越えるような新しい『ガンダム』も出て来るのでしょう。とても楽しみです。

 さて、『Gのレコンギスタ』も見るぞ。その記事は、また、いずれ。

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