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アニメ『池袋ウエストゲートパーク』はそんなにひどい出来なのか?

ライター

 1978年7月30日生まれ。男性。活字中毒。栗本薫『グイン・サーガ』全151巻完読。同人誌サークル〈アズキアライアカデミア〉の一員。月間100万ヒットを目ざし〈Something Orange〉を継続中。

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はじめに

 昨夜、石田衣良原作のアニメ『池袋ウエストゲートパーク』全12話を一気に観終えました。

 世評はかなり低いというか、はっきりと「ひどい出来」という人もいる作品なのだけれど、ぼくはそこまで悪いとは思いませんでしたね。

 まあ、酷評する人の気持ちもわかるのだけれど、「こんなものなのでは?」とも思うので、この記事ではその視点から作品を語っていきたいと思います。

 いや、まあ、そこまでひどくないんじゃないかなあ。テレビアニメの水準が全体的にレベルアップした結果、みんな、アニメを見る目が厳しくなっているよな。

アニメ『池袋ウエストゲートパーク』の問題点

 さて、そういうわけで相当に悪評芬々のアニメ『池袋ウエストゲートパーク』なのですが――うーん、どうなのでしょうね、たしかにいまひとつ評判が良くない理由もわかるのですよね。

 ぼくは原作の愛読者なので、どうしても原作と比べてしまうのだけれど、原作と比較して考えてみると、あきらかにセンスが違うことがわかる。

 大枠のストーリーそのものは原作を踏襲しているのですが、ディティールの差で原作より各段に平凡に仕上がっている感じ。

 ひとつはっきりと差がついているのが主人公であるマコトのキャラクターで、原作の皮肉っぽく軽口を叩く一方で情に厚いオリジナルなキャラクターがアニメでは再現できていない。

 単に典型的な「主人公キャラ」というか、普通の熱血キャラクターに仕上がってしまっている印象が強い。

 ただ、これはもう、どうしようもないことだとも思うのですよね。原作におけるマコトの性格設定は、あの軽妙洒脱な語り口の一人称で初めて成立しているものですから。

 また、主題歌の選定や映像の感覚が微妙に、しかし決定的にもうひとつ冴えないことも感じます。

 これもね、どうしようもないといえばどうしようもない。

 もちろん、より良い表現はありえるのだろうけれど、できていればやっているわけで、できないなかで最善を尽くしたのだろうとも思うのですね。

 そう、あまり及ばないポイントばかりをあげつらうのもどうかと思うので、「良かったところ」を見ていきたいと思います。

 そういう点に注目すると、ぼくは「いわれているほどひどくはないのでは」と感じるのですよね。

アニメ『池袋ウエストゲートパーク』の良かったところ

 アニメ版はおそらく評価の高いドラマ版を意識してのことなのでしょう、原作の初期作品を避け、後半からエピソードを取捨選択して物語を構成しています。

 中国人技能実習生に着目した「ドラゴン・ティアーズ」、ヘイトスピーチ演説を描く(はっきりいってしまえば在特会あたりがモデルの)「憎悪のパレード」など、原作でも非常に面白かったエピソードが並んでいます。

 これらは原作をリアルタイムに読んでこそ意味を持つ側面があるわけで、アニメ化の時点ではいくらか内容が古くなってしまっている印象がなくはないでしょう。

 とはいえ、石田衣良のクールでいてホットな物語は時代を経てアニメ化されてもそれなりに残っています。

 アニメになったために語り口の魅力は低減してはいますが、それでもストーリーそのものはやはり面白い。

 単純な善悪に割り切れない奥深さは、どこか池波正太郎や山本周五郎の時代小説を読んでいるかのよう。

 アニメでは尺の関係でキャラクターを削ったり、シナリオを簡略化したりしたことによって内容の奥深さが目減りした側面はあるのですが、それでもかなり面白いエピソードが残っていると思います。

 これらのエピソードは過去の漫画でも取り上げられておらず、その意味では今回、初めてヴィジュアル化されるものです。原作小説の一愛読者として、なんだかんだとはいっても映像化されて動くマコトやキング・タカシを見れたことは嬉しく感じました。

 先ほどマコトのキャラクターがもうひとつ原作に及ばないという話をしましたが、タカシやサルはわりと良く描けているんじゃないかな。

 タカシの氷のキングとしての魅力は過去の漫画作品などと比べてもよく再現できていると思います。

シナリオの再構成の妙

 また、面白いのは、単に連作短編の形式である原作からテキトーにエピソードを選んでひとつひとつ映像化したわけではなく、一本の一貫したストーリーとして再構成されていることです。

 ここだけは原作第一巻からエピソードを持って来て、Gボーイズとレッド・エンジェルスの対立、対決を軸に物語られている。

 このシナリオは必ずしも原作の魅力を十分に再現できているとはいえないかもしれないけれど、ただ原作をそのままになぞるだけならそもそもアニメーションの形にする意味がないわけだから、ぼくはこれで良かったのだと思っています。

 Gボーイズが「内乱」寸前まで行く「Gボーイズ冬戦争」を挟んで、最終的に「サンシャイン60通り内戦(シヴィル・ウォー)」になだれ込んでいく展開は、もちろん完ぺきではないにせよ、なかなか考えられているといっても良いのではないでしょうか。よく頑張った。

 そういうわけで、ぼくとしては全体の総評は、「そこまで悪くもないな」というものになります。

 まあ、絶賛できればそのほうが良かったには違いないのですが、すべての作品がそのクオリティに達することはありえないわけで、これはこれで楽しく観れました。

 可能であれば石田衣良の他の作品のアニメなんかも見てみたいなあと思ったりします。アニメにできそうなの色々あるものね。

 「次」があることをちょっと期待しつつ、この記事はここで終えることとします。

参考記事

 おしまい。

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